この記事の目次
本記事の要約
テレワーク(リモートワーク・在宅勤務)の普及により、企業は場所に縛られない柔軟な働き方を実現できるようになりました。
しかしその一方で、経営層や管理職の間では「生産性は本当に維持できているのか」「社員はきちんと働いているのか」「テレワークによって組織力が弱まっていないか」といった不安の声も少なくありません。
こうした背景から、勤務実態を可視化するテレワーク監視ツールを検討する企業が増える一方で、監視ではなくコミュニケーションを強化することで生産性向上を目指す「拠点間常時接続」という考え方も注目されています。
本記事では、管理強化型の監視ツールと、協働強化型の常時接続という2つのアプローチを整理し、それぞれの目的や効果の違いを明らかにします。どちらが正しいかではなく、自社の課題にどちらが適しているかを判断するための材料を提示します。
なぜ今、テレワークの「管理」が問題になっているのか
テレワークが急速に普及した当初、多くの企業は「働く場所の自由」というメリットに注目していました。しかし、数年が経過した今、経営層やマネージャーからは別の声が上がっています。
テレワークの2大課題は「生産性低下の不安」と「勤務実態が見えない不安」
① 生産性低下の不安
テレワークでは、社員一人ひとりが自宅やサテライトオフィスで業務を行います。オフィスのように周囲の様子が見える環境ではないため、「集中できているのか」「手が止まっていないか」「適切なペースで業務が進んでいるか」が把握しづらくなります。
実際には生産性が維持されている場合でも、「見えない」というだけで不安が生まれます。この“感覚的な不安”が、管理強化の方向へ舵を切らせる要因になっています。
② 勤務実態が見えない不安
もう一つの大きな課題は、「勤務実態が可視化されないこと」です。出社していれば、席にいる姿や打ち合わせの様子など、自然と勤務状況が視界に入ります。
しかしテレワークでは、「PCの前に座っているのか」「別の作業をしていないか」「業務時間を適切に使っているか」が分かりません。
この「見えなさ」が、「管理できていないのではないか」という心理を生み出します。しかし、ここで一つ重要な視点があります。テレワークの本質的な課題は、本当に「サボり」なのでしょうか。
実際には、「ちょっとした相談がしづらい」「今声をかけていいか分からない」「雑談が減り、関係性が希薄になる」といったコミュニケーション断絶が原因で、生産性が下がるケースも多く見られます。
つまり、テレワークの問題は単純な管理不足ではなく、「見えないことによる不安」と「関係性の希薄化」が複雑に絡み合っているのです。
効率的なテレワークを実現する2つのアプローチ
こうした課題に対し、企業が選択できるアプローチは大きく2つに分かれます。
① 管理強化型:テレワーク監視ツール
一つ目は、「管理を強化する」アプローチです。これは、社員のPC操作ログや稼働時間、アクティビティを可視化することで、「勤務実態を把握する」「業務時間を数値化する」「生産性を測定する」ことを目的とした方法です。このアプローチの前提にある考え方は、
「見えないなら、見えるようにすればよい」
というものです。監視ツールは、データという形で“見えない不安”を解消します。管理側にとっては安心材料となり、労務管理の透明性向上にも寄与します。一方で、運用を誤ると、「監視されている感覚」「信頼されていないという印象」「心理的安全性の低下」を招く可能性もあります。
② 協働強化型:拠点間常時接続
もう一つのアプローチが、「協働を強化する」方法です。拠点間常時接続とは、オフィスや自宅など離れた場所にいるメンバー同士を、日常的に映像・音声でつないだ状態にする仕組みです。この方法の前提にある考え方は、
生産性は管理で上げるのではなく、関係性で上げる
というものです。常時接続では、「相手の様子が視界に入る」「声をかけるタイミングが分かる」「会議を設定せずに相談できる」といった環境が生まれます。
つまり、オフィスで自然に行われていた「ちょっとした確認」「立ち話」「目線や表情から読み取る空気感」をテレワーク環境でも再現しようとする発想です。
常時接続は、社員を「管理する」ための仕組みではなく、「孤立を防ぎ、相談の初動を早めるための仕組み」と言えます。
2つのアプローチは“正反対の思想”から生まれている
整理すると、両者の違いは明確です。
- 監視ツール:見えない不安を“可視化”で解消する
- 常時接続:関係性の断絶を“つながり”で解消する
どちらが優れている、という単純な話ではありません。重要なのは、自社の課題がどちらに近いかです。
- 「サボりが問題」なら監視型
- 「相談しづらさが問題」なら協働型
この違いを理解せずに導入すると、「思った効果が出ない」という結果になりかねません。
【比較表】監視ツール vs 常時接続
ここまで整理してきた通り、テレワーク効率化のアプローチは大きく2つに分かれます。その違いを分かりやすく比較すると、以下のようになります。
| 比較項目 | 監視ツール型 | 常時接続型 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 勤務実態の可視化・管理強化 | コミュニケーション強化・孤立防止 |
| 前提思想 | 見えないなら数値で管理する | 見えないなら“つながり”をつくる |
| 可視化対象 | 操作ログ・稼働時間・画面 | 表情・空気感・状況 |
| 得られる効果 | 勤務状況の透明化 | 相談の初動スピード向上 |
| メリット | 管理側の安心感 | 心理的距離の縮小・安心感 |
| デメリット | 不信感が生まれる可能性 | 運用設計が必要 |
| 向いている組織 | 成果数値管理型組織 | 協働・連携重視型組織 |
この表から分かるのは、両者は「効率化」という同じゴールを目指しながらも、アプローチの思想がまったく異なるという点です。監視ツールは「管理」を軸に、常時接続は「関係性」を軸に設計されています。どちらが優れているかではなく、自社が抱える課題がどちらの方向にあるのかが重要です。
監視ツールの具体例と特徴
では実際に、監視ツールにはどのようなものがあるのでしょうか。現在、テレワーク管理ツールは主に以下の3タイプに分類できます。
① PC操作ログ取得型ツール
代表例:
これらのツールは、社員のPC操作ログやアプリの使用状況を記録・分析し、勤務実態を可視化できる仕組みです。
具体的には、どのアプリをどれだけの時間使用しているかを把握したり、不審な操作や通常とは異なる挙動を検知したりすることが可能で、セキュリティ対策としても一定の効果を発揮します。客観的なデータに基づいて勤務状況を確認できるため、管理側にとっては安心材料となり、情報漏洩リスクの低減にもつながります。
監視ツールは、すべての企業にとって否定的なものというわけではありません。
特に以下のようなケースでは、有効に機能する場合があります。
- 労務リスク管理が重要な業種
- 業務量の偏りを是正したい組織
- 作業時間の可視化が評価制度と直結している環境
- 成果よりもプロセス管理が重要な業務
こうした環境では、勤務状況の数値化が組織運営の安定につながります。
つまり、監視ツールは「不信のための道具」ではなく、「透明性確保のための仕組み」として活用されることもあるのです。
一方で、従業員側からは「監視されている」という印象を持たれやすく、心理的な負担が生じる可能性があります。また、ログや操作時間といった数値では、創造的な思考や構想時間など、生産性の本質的な部分を十分に測ることが難しいという側面もあります。
② スクリーンキャプチャ型ツール
代表例:
このタイプのツールは、一定時間ごとにパソコンの画面をキャプチャし、作業内容を記録する仕組みです。
定期的にスクリーンショットを保存することで、実際にどのような業務を行っていたのかを視覚的に確認できる点が大きな特徴です。管理側は、単なる稼働時間だけでなく、具体的な作業内容を把握できるため、業務外の作業を抑止する効果も期待できます。
一方で、画面そのものを記録されることから、従業員にとっては強い監視感を抱きやすく、心理的な負担やモチベーション低下につながる可能性があります。また、業務内容によっては個人情報や機密情報が画面に表示されるケースもあり、プライバシー保護の観点から慎重な運用が求められます。
③ 稼働時間管理型ツール
代表例:
このタイプのツールは、主に勤務時間やPCのアクティブ時間を可視化することを目的としています。出退勤の記録や稼働時間の自動集計が可能で、労務管理を効率化できる点が大きな特徴です。
特にテレワーク環境では、勤務時間の把握が難しくなるため、客観的なデータに基づいて管理できることは企業にとって安心材料となります。また、長時間労働の傾向を早期に把握できるため、働きすぎの抑制やコンプライアンス対策にも有効です。
一方で、「時間=成果」ではないという課題もあります。単に稼働時間が長いことが必ずしも高い成果につながるわけではなく、創造性や思考を要する業務では、時間の長短だけでは評価が難しいという側面があります。そのため、創造的業務や高度な専門業務との相性は必ずしも強いとは言えません。
監視ツールの本質
監視ツールの最大の価値は、
「見えない勤務状況を数値化できること」
です。
管理職や経営層にとっては、「ちゃんと働いている」という安心材料になります。特に以下のようなケースでは、有効に機能する場合があります。
- 労務リスク管理が重要な業種
- 業務量の偏りを是正したい組織
- 作業時間の可視化が評価制度と直結している環境
- 成果よりもプロセス管理が重要な業務
こうした環境では、勤務状況の数値化が組織運営の安定につながります。
つまり、監視ツールは「不信のための道具」ではなく、「透明性確保のための仕組み」として活用されることもあるのです。
しかし同時に「信頼より統制が強まる」「自律型組織と相性が悪い」「数値に表れない価値が評価されにくい」といった課題も抱えています。
つまり監視ツールは、管理強化が目的の組織には適しているが、協働強化には直結しにくい という特徴があります。
常時接続の具体例と特徴
一方、常時接続型のアプローチはどのようなものなのでしょうか。常時接続は大きく分けて2種類あります。
① Web会議ツールを常時接続で運用する方法
代表例:
ZoomやMicrosoft TeamsなどのWeb会議ツールを本来の「会議用途」だけでなく、常設ルームとして常時接続状態で運用する方法です。
既存のツールや契約環境をそのまま活用できるため、追加コストを抑えやすく、比較的短期間で始められる点が特徴です。新たな専用機器を導入する必要がないケースも多く、導入のハードルが低いため、まずは実験的に試してみたい企業にとっては取り組みやすい選択肢と言えるでしょう。
一方で、通信の安定性が環境によって左右されやすい点や、運用によっては毎回手動で接続操作が必要になる場合がある点には注意が必要です。また、もともと会議用途を前提に設計されたツールであるため、日常的な常時接続運用には工夫が求められ、継続的な活用には運用設計の見直しが欠かせません。
② 専用常時接続システム

代表例:
拠点間常時接続システムは、単なる会議ツールではなく、「日常的につながる」ことを前提に設計されています。
ワンタッチで接続できる操作性や、高い通信安定性を重視しており、常設ディスプレイと組み合わせることで、拠点同士が常に空間を共有しているような環境をつくることが可能です。会議のたびにスケジュールを調整したり接続操作を行ったりする必要がなく、常時安定した接続状態を維持できるため、オフィスに近い空気感や自然なコミュニケーションが生まれやすい点が大きなメリットです。
一方で、専用機器の導入やシステム構築には初期費用が発生し、安定運用のためにはネットワーク環境の整備も必要となるため、事前の計画と投資判断が求められます。
- Point:テレワークの常時接続はタブレットがおすすめ
-
拠点間常時接続システム「お隣オフィス」のテレワーク向けタブレットは、在宅スタッフもワンタップで参加でき、本社・支店・工場などの現場と“隣にいる感覚”で会話が可能です。オフィスも在宅も、同じ空気を感じながら働ける環境を簡単に実現します。
常時接続の本質
常時接続の最大の価値は、
「管理」ではなく「関係性」を再構築すること
にあります。
「ちょっと聞ける」「雑談できる」「相手の様子が分かる」こうした“余白”が生まれることで、結果的に業務の手戻りが減り、判断スピードが上がります。監視ツールが「数値で安心を得る」仕組みなら、常時接続は「つながりで安心を得る」仕組みです。
一方で、常時接続も万能ではありません。「映像が映ることへの心理的抵抗」「つながっているが会話が生まれない状態」といった運用上の注意点も存在します。常時接続は単なる機器導入ではなく、「どの時間帯に」「どの距離感で」「どの目的でつなぐのか」という設計が重要になります。
なぜ監視ではなく常時接続が注目されているのか
近年、テレワークにおける課題解決策として「監視ツール」だけでなく、「常時接続」が注目されるようになってきました。その背景には、単なる管理強化では解決できない問題が顕在化してきたことがあります。
テレワークの本質的な課題は「統制」ではなく「断絶」
テレワーク導入当初、多くの企業が抱いた不安は「サボられていないか」という点でした。しかし、実際に運用を続けていく中で見えてきたのは、必ずしも“怠慢”が問題ではないという事実です。むしろ多くの現場で起きているのは、
- ちょっとした相談ができない
- 判断に時間がかかる
- 情報共有のタイミングが遅れる
- 雑談が減り、関係性が弱まる
といった「関係性の断絶」です。監視ツールは、勤務時間や操作ログを可視化することで「働いているかどうか」の安心材料を提供します。しかし、相談のしづらさや孤立感を直接解消するものではありません。
一方、常時接続は「つながっている状態」をつくることで、オフィスに近い環境を再現します。声をかけやすくなることで、結果として判断スピードが上がり、業務の停滞を防ぎます。
つまり、「監視は管理の安心を生み」「常時接続は関係性の安心を生む」という違いがあります。
信頼ベースのマネジメントが求められている
もう一つ重要なのは、働き方の価値観の変化です。近年は「自律型組織」「成果主義」「心理的安全性」といったキーワードが重視されるようになっています。その流れの中で、過度な監視は逆に信頼関係を損なう可能性があります。もちろん、セキュリティ対策や労務管理の観点から一定のログ管理は必要です。
しかし、テレワークの質を高めるという観点では、
「見張る」よりも「つなぐ」
という発想のほうが、組織文化との相性が良いケースも増えています。常時接続が注目されているのは、単なるツールの話ではなく、マネジメント思想の転換が背景にあると言えるでしょう。
重要なのは「ツール選び」よりも「目的の明確化」
ここで最も大切なのは、ツールそのものではなく、「管理を強化したいのか」「協働を強化したいのか」という目的の明確化です。目的が曖昧なまま導入すると、「思った効果が出ない」「現場が抵抗する」といった事態になりかねません。
まとめ
管理を強めたいなら監視、協働を強めたいなら常時接続
テレワークを効率化するためのアプローチは、大きく2つに分かれます。
- 管理を強化し、勤務実態を可視化したいなら監視ツール
- 関係性を強化し、相談や連携を円滑にしたいなら常時接続
どちらが正解という単純な話ではありません。重要なのは、自社の課題がどこにあるかを見極めることです。もし現在の課題が、「本当に働いているのか分からない」という不安であれば、監視ツールが適しているかもしれません。
しかし、「相談が遅れる」「孤立感が強い」「チームの一体感が弱まっている」といった課題であれば、常時接続という選択肢が有効です。テレワークの質を高めるために必要なのは、単なるツール導入ではなく、組織の課題に合ったアプローチを選ぶことです。
「管理」か「信頼」か。「統制」か「関係性」か。自社にとって最適な方法を見極める材料として、本記事が参考になれば幸いです。
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