
三井不動産株式会社
導入規模 : 全国49拠点、端末90台(オンプレミス構成)
用途 : BCP・防災・災害対策における全国拠点間の映像通信
WEBサイト : https://www.mitsuifudosan.co.jp/

日本を代表する総合デベロッパーである三井不動産株式会社。オフィスビル、商業施設、ホテル、リゾートなど多彩な事業を全国で展開する同社にとって、災害発生時の迅速な情報共有と意思決定は経営の生命線ともいえる重要課題です。同社はBCP(事業継続計画)・防災・災害対策のための映像通信システムの大規模リプレイスにあたり、リモートコミュニケーションシステム「LoopGate」を採用しました。全国約49拠点を結ぶこのシステムは、本部の危機管理センターに設置された46インチモニター42枚により、全国の拠点映像を一斉表示するという圧巻のスケールで運用されています。
本記事では、三井不動産がなぜLoopGateを選んだのか、どのような要件のもとでBCP対応の映像通信システムを設計したのか、そして導入に至るまでの道のりを詳しくご紹介します。
三井不動産が抱えていた課題
既存システムの保守切れという転機
三井不動産では、以前から国内大手メーカーのテレビ会議システムを全国拠点に展開し、BCP・防災・災害対策の映像通信基盤として活用していました。しかし、サーバの保守切れを迎えることが確定しており、それまでにシステムの更新を完了する必要がありました。保証期間は残っていたものの、サーバ保守が終了すれば障害発生時の復旧対応が受けられなくなり、BCP・危機管理という最も重要な業務の基盤が不安定な状態に置かれることになります。
三井不動産の設備管理を担当する三機工業株式会社を通じて、複数のテレビ会議システムベンダーへの問い合わせが行われました。三機工業は三井不動産の施設管理やネットワーク構築を長年にわたって支えてきたパートナー企業であり、今回のプロジェクトでも、エンドユーザーである三井不動産とシステムベンダーの間をつなぐ重要な役割を果たしました。
Web会議ツールが全盛の時代にあっても、三井不動産が求めていたのはZoomやTeamsのようなソフトウェアベースの会議ツールではありませんでした。BCP・危機管理の現場では、PCの起動やアプリケーションの立ち上げを待つ余裕はなく、リモコン一つで誰でも即座に操作できる専用端末であること、そしてインターネットに依存しない閉域ネットワークで確実に通信できることが絶対条件だったのです。大規模な地震や台風が発生した際、インターネット回線が輻輳したり遮断されたりする事態は十分に想定されます。そのような状況下でも危機管理センターと全国拠点の映像通信を確実に維持できる仕組みこそが、三井不動産にとっての譲れないBCP要件でした。
なぜLoopGateが選ばれたのか。BCP対応における4つの強み

三井不動産のリプレイス案件では、国内WEB会議メーカーなど複数の競合製品との比較検討が行われました。コンペプレゼンでは、LoopGateの開発・提供元である株式会社RTCテックソリューションズから営業担当者と技術者が訪問し、実機を使ったデモンストレーションを実施しました。
このプレゼンで三井不動産側の反応は非常に良好でした。特に評価されたポイントは以下の通りです。
誰でも直観的に操作できるリモコン操作
まず評価されたのが「リモコン操作」の利便性です。災害時には、ITに精通していない担当者でも迷わず操作できることが求められます。LoopGateは専用リモコンで電話帳から相手先を選んで発信するだけのシンプルな操作体系を備えており、Web会議ツールにはないこの直感的な操作性が高く評価されました。三井不動産側からも「操作としてリモコンが重要。Web会議はリモコンがない」という声があがっており、BCPの現場において、ここが他社製品との決定的な差別化ポイントになりました。
本部からの一斉接続を可能にする自動着信機能
次に評価されたのが「自動着信機能」です。LoopGateは着信時に自動で応答する設定が可能であり、災害発生時に各拠点の担当者が端末の前にいなくても、危機管理センターから一斉に接続して映像を確認できます。他社製品ではこのカスタマイズが前提となっており、標準機能として自動着信を実現できるLoopGateの優位性が際立ちました。BCP対応では「人がいなくてもつながる」ことが極めて重要であり、この点がLoopGateの大きな強みとなっています。
インターネットに依存しないオンプレミス構成への対応力
さらに評価されたのが「オンプレミス対応」の柔軟性です。三井不動産が構築するネットワークは、インターネットに出ないクローズドなネットワークであり、かつ三井不動産の社内ネットワークとも完全に切り離された、危機管理専用の独自ネットワークです。LoopGateはクラウドだけでなくオンプレミスでの導入にも対応しており、この要件に合致する数少ない製品でした。多くのWeb会議ツールやテレビ会議システムがクラウド前提の設計となっている中で、完全オンプレミスで49拠点規模の多地点接続を実現できるLoopGateの技術力は、三井不動産の厳しいBCP要件を満たす決定的な強みとなりました。
ワンプッシュで危機管理センターと全拠点をつなぐボタンスイッチ
加えて、LoopGateの「ボタンスイッチ」による操作も現場から好評を得ました。これは物理的なボタンにあらかじめ設定した発信先を割り当て、ワンプッシュで一斉放送ルームに接続できる仕組みです。災害発生時の緊迫した状況下で、画面操作に手間取ることなく即座に危機管理センターと全国拠点との通信を開始できるこの機能は、まさにBCP・防災用途にふさわしい設計思想の表れです。
オンプレミス構成だからこそ実現できるLoopGateの価値

全国49拠点をつなぐネットワーク設計。冗長化とセキュリティ
本案件で特に技術的な注目点となったのが、サーバの冗長構成です。三井不動産は国内の遠隔地2か所にデータセンターを設け、それぞれにLoopGateの多地点接続サーバを設置しました。一方のサーバに障害が発生した場合にもう一方へ自動的に切り替えるフェイルオーバー構成を採用し、BCP用途にふさわしい高い可用性を確保しています。
この冗長化の実現には相当な技術検証が必要でした。切り替え時に発生するわずかなタイムラグや、アプリケーション側のキャッシュの影響で切り替わらない場合の対処法など、現実的な制約事項を事前に洗い出し、お客様に説明したうえで合意を得ています。オンプレミスで危機管理システムを構築する以上、冗長構成は必須の要件であり、こうした技術検証と丁寧な合意形成を含めて対応できることがLoopGateの強みです。
セキュリティ面でも厳格な要件が課されました。三井不動産独自のセキュリティチェック項目を通過するにあたってきめ細かな対応が求められました。三井不動産社内での会議で承認されなければ発注そのものが行えないという厳しい関門であり、RTCテックソリューションズの営業チームと技術チームが一体となって資料を作成し、三機工業と連携しながら一つひとつの項目をクリアしていきました。
圧巻の危機管理センター。大型映像壁が映し出す全国の「いま」
本導入の最大の見どころともいえるのが、三井不動産の危機管理センターに設置された映像表示システムです。46インチモニター42枚を組み合わせた大型映像壁に、全国の拠点映像を一覧表示する構成は、まさに圧巻の一言です。4つの一斉放送ルームで合計最大64拠点の映像をリアルタイムに映し出すことができ、災害発生時には全国の状況を文字通り「一目で」把握することが可能になります。
この一斉放送機能の実現には、LoopGateの標準機能をベースとしたカスタマイズが施されています。危機管理センターに設置された4台のLoopGate端末がそれぞれ一斉放送用のルームに接続し、各端末が16分割の画面を表示します。画面上のどの位置にどの拠点の映像を配置するかは事前に設定で固定されており、たとえば画面の1番から64番の位置に地点ナンバーが割り当てられています。

さらに注目すべきは、危機管理センター以外の拠点は「配信モード」で接続される点です。一斉放送時には各拠点のマイクが強制的にオフになり、危機管理センター(事務局)からの一方向配信が可能になります。これにより、49拠点が同時に接続しても音声のハウリングや混線を起こすことなく、危機管理センターからの指示を全拠点に一斉配信できるBCP体制が整えられています。
一斉放送ルームのほかにも、5拠点程度のグループごとに接続可能な小規模ルームが20室用意されており、部門単位や地域単位での会議にも柔軟に対応できます。たとえば、オフィス対応部ごとのルーム、三井不動産ファシリティーズ関連のルーム、さらにはゼネコン各社との連携用ルームなど、組織の実態に即したルーム構成が設計されています。
全国納品という大作戦──延べ数十名体制での展開
本案件のもう一つのチャレンジが、全国約49拠点への端末設置作業です。本部(日本橋)には24台の端末を集中設置し、残りの約65台は北海道から広島まで全国各地に展開されました。1日で最大13地点・20端末を4班で並行して設置するなど、延べ数十名体制で全国規模の展開が行われました。拠点ごとに設置環境は異なり、オフィスビル、商業施設の管理室、ゼネコン各社のオフィスなど多様なロケーションに対応する必要があり、事前のスケジュール調整と現場マニュアルの整備が成功の鍵となりました。
導入後も進化し続ける──オンプレミスならではのカスタマイズ対応
大規模なオンプレミス導入においては「導入して終わり」ではなく、運用開始後の継続的なサポートとカスタマイズ対応こそが、お客様との信頼関係を築く基盤となります。RTCテックソリューションズでは、平日7:30から19:00、土日祝9:00から18:00の電話サポートに加え、拠点用機器の先出しセンドバック保守、サーバのオンサイト保守を提供しており、三井不動産のような大規模BCP案件においても万全の保守体制を敷いています。
オンプレミス構成には、導入後に現場の運用実態に合わせた細やかなカスタマイズニーズがつきものです。三井不動産の案件でも、運用開始後にいくつかのカスタマイズ対応が発生しています。
LoopGateのカスタマイズ事例:現場の声に応える継続的改善

ダイレクト接続中の電話帳ページ送り機能の実装
危機管理センターの宿直担当者が通信中に電話帳の後方ページの拠点を呼び出す際、ページ送りの操作性に課題がありました。RTCテックソリューションズでは、通信中でもリモコンの左右ボタンで電話帳のページ送りを行える機能を新たに開発。まず1台の端末で動作検証を行い、三井不動産側での確認を経たうえで全台に展開するという段階的な導入プロセスを経て、全拠点への反映を完了しました。
HDMIスイッチャーとの映像信号チューニング(EDID対応)
本部のブースではHDMIスイッチャーを経由してモニターに映像を表示する構成を採用していますが、一部のブースでモニター起動時に映像信号の認識が不安定になる症状が発生しました。これはEDID(Extended Display Identification Data)の取得タイミングに起因する問題であり、EDIDエミュレータを設置して映像信号を安定させるチューニングを実施。対象ブースへの設置と動作検証を重ね、安定稼働を実現しています。
こうした細かなチューニングに一つひとつ応じる姿勢は、クラウドサービスでは得にくいオンプレミス構成ならではの価値です。BCP・危機管理のような「絶対に止められない」用途においては、現場固有の環境に合わせた調整ができることが大きなアドバンテージとなります。オンプレミスでの大規模構築を検討する企業にとって、こうした導入後のカスタマイズ対応力は、製品選定における重要な判断材料の一つといえるでしょう。
まとめ | 三井不動産が実現した新しい災害対応の形
今回のLoopGate導入により、三井不動産はこれまでにない規模と即応性を備えたBCP・災害対策コミュニケーション基盤を手に入れました。
危機管理センターの映像壁に全国の拠点映像を一斉表示するシステムは、災害発生直後から全国の現場状況を「見える化」し、経営判断のスピードを飛躍的に高めます。リモコン一つで操作できる専用端末は、ITリテラシーに依存しない確実なオペレーションを保証します。そして、インターネットから完全に独立したクローズドネットワーク上のオンプレミス構成は、大規模災害時にインターネットが途絶した場合でもBCP体制を維持できる強靭さを備えています。
BCP・危機管理という、一切の妥協が許されない領域。そこに求められるのは、「つながらないことがない」という絶対的な信頼性と、「誰でも使える」というシンプルさの両立です。三井不動産がLoopGateを選んだのは、まさにこの二つを高い次元で実現できると判断したからにほかなりません。
本案件を通じて構築された危機管理システムは、年に一度の定期点検を含む保守運用計画のもとで安定的に運用されています。平時にはグループ別の小規模会議に活用し、災害発生時には危機管理センターから一斉放送で全拠点を瞬時につなぐ──平常時の業務効率化と非常時のBCP対応を一つのシステムで実現するという、三井不動産ならではの先進的な活用モデルが確立されました。
LoopGateについて
LoopGateは、株式会社RTCテックソリューションズが開発・提供するリモートコミュニケーションシステム。専用端末・ノートパソコン・タブレットによるテレビ会議、拠点間の常時接続、遠隔窓口など多彩な用途に対応し、官公庁・自治体から民間企業まで3000社以上の幅広い導入実績を持っています。クラウド型・オンプレミス型の両方に対応し、お客様の環境やセキュリティ要件に合わせた最適な導入形態をご提案いたします。「全国の拠点を一つの部屋にまとめたい」「災害時にも確実につながる映像通信が必要」「ITに詳しくないスタッフでも使えるシステムが欲しい」──そうしたお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度LoopGateにご相談ください。
LoopGate製品サイト : https://loopgate.jp/






